思ったことを書くだけ

読んだ本の紹介、自転車練習、ドキュメンタリー視聴、映画、美術関連、時事問題・・・気になったことをメモとしてまとめていきます。

帚木蓬生『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』 

ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力

【内容】
「負の力」が身につけば、人生は生きやすくなる。セラピー犬の「心くん」の分かる仕組みからマニュアルに慣れた脳の限界、現代教育で重視されるポジティブ・ケイパビリティの偏り、希望する脳とプラセボ効果との関係…教育・医療・介護の現場でも注目され、臨床40年の精神科医である著者自身も救われている「負の力」を多角的に分析した、心揺さぶられる地平。

【メモ&雑感】
いきなりであるが、本書まえがきのところから引用。

私たちにとって、わけの分からないことや、手の下しようがない状況は、不快です。早々に解答を捻り出すか、幕をおろしたくなります。しかし、私たちの人生や社会は、どうにも変えられない、とりつくすべもない事柄に満ちあふれています。むしろそのほうが、わかりやすかったり処理しやすい事象よりも多いのではないでしょうか。-P10-

そうなんのだ。我々はわからないことに対しストレスを感じ、なんらかの答えを何かの型に当てはめるなどして、すぐに求めようとする。わからないことと対峙し、悶々としながらも考え続けることから避ける傾向にある。しかし、それを避けるうちは結局はわからないことの本当の姿が見えてこない。

著者は26歳になろうと言う若さで夭折したキーツと言う日本人にはほぼ馴染みのないと言って良いであろう詩人についての話を紹介している。というものの、キーツこそが、本書の題名である「ネガティブ・ケイパビリティ」と言う言葉を使った最初の人物であったからである。

キーツは尊敬するシェイクスピアの作品を読みふけるときに、対象に同一化して作家がそこに介在しないことで生み出された作品が、人間社会の複雑さを見事に描き切っていることを見て、ひとつの概念に到達する。

個性を持たないで存在し、性急な到達を求めず、不確実さと懐疑とともに存在する-P27-ことができる能力-ネガティブ・ケイパビリティを-備えることで、対象の真実を捉えられる。

キーツが到達した「ネガティブ・ケイパビリティ」の概念は170年経ってビオンと言う精神分析の医者に取り上げられ脚光を浴びることになる。ビオンは「ネガティブ・ケイパビリティ」を保持しつつ、治療者と患者の出会いを支え続けることの重要性を説いた。つまり、患者の話を聞き、精神分析のなんらかのパターンに当てはめ、「あなたは○○パターン」なので治療には・・・と言った具合に早急に解答を求める風潮に釘を刺した形になった。

研究者にはまさに大切な考え方であろう。答えの糸口が掴めなくても日々対象と向き合い続ける能力。これなくして研究者は務まらない。

研究者と言わずとも普段の仕事、生活でも大切な考えだと思う。

世の中は「早く!答えを」に溢れている。その結果生み出された答えは「個」が介在してしまい真の姿を捉えることができず、結局は誤った解であり失敗することも多々ある。

すべての物事に適応することは回りが待ってくれないので、できないかもしれないが、何かひとつ、ふたつは、わからなくても対象と向き合い続けるものを持っていても良いのではないかと思う。

※一か月ほど前に読了
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